視覚障害者の屋内誘導を実現します。

  • 警告タイル
  • 誘導タイル

屋内用点字ブロック開発日記

視覚障害者が屋内を自由に移動できるように、屋内用点字ブロックを開発中。高齢者や車椅子・ベビーカー利用者等にもやさしい、突起の小さなブロックです。
視覚障害者との地道な研究や成果を報告していきます。

お茶の水・井上眼科クリニックの床デザイン

お茶の水・井上眼科クリニックの床デザイン

お茶の水・井上眼科クリニックの床デザイン

お茶の水・井上眼科クリニックの床デザイン

視覚障害者の屋内誘導を考えるきっかけとなった、「お茶の水・井上眼科クリニック」についてお話します。

お茶の水・井上眼科クリニックは、医療法人社団済安堂井上眼科病院が、外来を分離して新しく作ったクリニックです。
JR御茶ノ水駅聖橋口正面という、とても便利な場所です。
井上眼科病院は、今年開院130周年という、とても老舗の眼科病院で、その規模も恐らく日本最大の眼科病院だと思います。

およそ5年前に、このクリニックの設計をおこないました。
患者さんは、目が見えづらい方が多く、子供からお年寄りまで様々な方々が訪れます。1日の外来患者数は1000人という、とても規模の大きな施設を計画していました。

だれもが自分自身で診療を受けられるように、分りやすい平面計画や照明計画、サイン計画、家具計画を行っています。
特にサイン計画では、設計段階からおよそ100名の患者さんに、サインの調査に参加していただき、文字フォントや文字サイズ、フォントやマップ等について、分りやすいサインを開発しています。
内装材料も一つ一つ吟味して選びながら、分りやすい施設環境を実現しました。

このようなユニバーサルデザインの取組みが評価され、第42回サインデザイン賞(SDA賞)で招待審査員賞を受賞することができました。

メイン通路には、カーペットの床に菱形のタイルが埋め込まれて、ここがメイン通路であることを伝えています。このタイルは塩化ビニール素材で、カーペットとの硬さの違いが大きいために、足裏の感触や、杖の感触の違いで誘導することを目指しています。

 

お茶の水・井上眼科クリニック

開院後の調査では、特にロービジョン(弱視)の方から、光が反射して通路であることが視覚的に分るという評価でした。
内装素材を工夫することで、視覚障害者を誘導することが出来ることがわかった最初の仕事です。

以降、井上眼科病院さんとは、ユニバーサルデザインの研究活動を一緒に進めています。

次回は、井上眼科病院さんと一緒に研究した「床の素材差による誘導の有効性に関する研究」をご報告します。

株式会社クワハタデザインオフィス
桑波田 謙
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エスコットのご紹介

現在、弊社で開発している屋内用点字ブロック「エスコット」のご紹介です。

エスコット

前回ご紹介した「UDフロア」は、カーペットの床に埋め込むタイプの屋内用点字ブロックでした。

施設によっては、床はカーペットとは限りません。石や長尺ビニールシート、Pタイル、コンクリートなど様々です。特に、建物のエントランス部分の床は、様々な素材が用いられています。

そこで、そのような多様な床材に対応できる、視覚障害者誘導ブロックの開発を進めています。

商品名は「エスコット」です。

付添いや送り届けるという意味の、エスコートという言葉が語源です。

「エスコット」は、床に直接貼り付けるタイプの屋内用点字ブロックです。

床面が平滑であれば、素材を選びません。

接着剤や両面テープで、簡単に設置することが出来ます。

「エスコット」は、警告ブロックと誘導ブロックの2種類が合って、それぞれの表面には小さな突起パターンが成形されています。

警告ブロックにはドットパターン、誘導ブロックには線状パターンが施されていて、「止まれ」、「進め」の案内で、屋内を誘導する仕組みです。

バリアフリー新法では、公共的な施設の入口から案内設備までに、視覚障害者誘導用ブロックを設置するように規定されていますが、「エスコット」はこの仕様に対応した商品です。

エスコットの厚みは、突起部分でおよそ2㎜、ベースを含めた全体の厚みは2.4㎜です。

2.4㎜という厚みは、高齢者が躓く可能性のある段差許容値に対応しています。

言い換えると、2.4㎜を超える段差は、高齢者の躓きの原因になるということです。

高齢者の躓きだけでなく、車椅子やベビーカーの利用にも小さな突起は有効です。

これまでの研究から、JIS規格型点字ブロックと比べて、車椅子やベビーカーの利用時には大幅な振動の軽減を確認しています。

小さな突起による誘導は、利用者全てに安心と安全を提供することが出来ます。

またエスコットは、点字ブロックと同様な並べ方で設置します。視覚障害者が普段使い慣れている点字ブロックと同じ仕組みで案内しますので、使いこなすことがとても容易です。

更に、様々なカラーバリエーションを用意していることも特徴です。点字ブロックというと黄色をイメージする方が多いと思います。しかし、建物内部では、建築の意匠との組合せが重要だと考えています。建築内に設置しても、インテリア性を崩すことがなく、視覚的にも分りやすくするために、豊富なカラーバリエーションから選んでいただくことが可能です。必要に応じて、指定色の対応も可能にしています。

エスコットは、2010年度横浜市中小企業研究開発助成金を取得して開発されています。

横浜市の行政現場から、屋内用の点字ブロックを開発して欲しいという、行政現場の課題を弊社で解決すべく、商品開発を進めています。

詳しくは、弊社までお問合せください。

株式会社クワハタデザインオフィス

桑波田 謙

UDフロアのご紹介

現在開発を進めている屋内用点字ブロック「UDフロア」をご紹介します。

大田区役所

大田区役所

大田区役所

役所や医療施設、オフィス等の施設の多くは、床にカーペットタイルを敷いています

このカーペットの床に、塩化ビニール製のタイルを埋め込んで、視覚障害者を誘導しようという商品が「UDフロア」です。

この取組みのきっかけになったのが、お茶の水・井上眼科クリニックの床のデザインです。

お茶の水・井上眼科クリニックでは、カーペットと同じ厚みの塩化ビニール製タイルを、メイン通路に連続して配置しています。このデザインは、弱視の方にも分かりやすいと評価されたデザインです。

実際に、カーペットとタイルという素材の違いで、本当に視覚障害者を誘導できるかどうか、井上眼科病院さんと共同研究で確認しています。

実験では、点字ブロックと同様にタイルの経路を辿れることが認識できました。

この知見を生かし、更により経路伝達を向上させるために、このタイルにわずかな突起を取り付けて、分岐点等の注意喚起を行う警告ブロック、直進を伝える誘導ブロックを開発しました。

突起の高さは、わずか1㎜です。

これまでに、神奈川県総合リハビリテーションセンターの研究者と共同で、警告ブロックや誘導ブロックの突起パターンを研究してきました。

この研究は、2010年度、2011年度の科学研究費補助金(日本学術振興会)によって実施されています。

この研究内容についても、今後このブログでご報告していきます。

このように、床の素材の違いとわずかな突起を用いて、視覚障害者を誘導する商品が「UDフロア」です。

1㎜というわずかな突起ですから、高齢者や車椅子利用者、ベビーカー利用者にも安全で使い易い仕様です。

「UDフロア」は、今年3月に、東京都の大田区役所で採用されました。

デザイン的にも、建築空間にマッチして、美しく仕上がっています。

施工後に、全盲の視覚障害者9名を対象に、「UDフロア」で目的の場所にたどり着けるかどうか実験を行ったところ、ほぼ全員が白杖で辿って目的の場所に到達し、その効果を実証することが出来ました。

UDフロアは、近日大手床材メーカーより販売が開始されます。

お問い合わせは、弊社までご連絡ください。

株式会社クワハタデザインオフィス

桑波田 謙

視覚障害者の屋内誘導に向けて

はじめまして!
クワハタデザインオフィス 桑波田といいます。
横浜市の関内で、インテリアデザインの仕事をしています。

これまでに、病院や役所、高齢者施設、オフィス等のデザインに取り組んできました。
多くの人が訪れる施設環境をデザインすることが、仕事の中心です。
宜しければ、弊社ホームページを覗いてみてください。
クワハタデザインオフィスのホームページ

このブログでは、長年取り組んできた、視覚障害者の屋内誘導を実現する「屋内用点字ブロック」の研究開発について書いていこうと思います。

視覚障害者の移動支援として、屋外では、点字ブロックや音声案内などの整備が少しずつ広がってきました。駅の構内や駅周辺では、かなりの割合で点字ブロックの整備が進んでいる状況です。その一方で、建物の中では点字ブロックや音声案内の整備はごく限定的で、視覚障害者が建物の中を自由に移動できる環境にはなっていません。今は受付や案内所で人的対応に頼らざる負えない状況です。

デザイナーとしては、視覚障害者も晴眼者と同様に、建物の中も自由に過していただきたい。人に連れて行ってもらわなくても、例えばトイレくらいは一人でたどり着けるように、施設を整備したい。
そんな思いから、だれもが安心して過せるユニバーサルデザインの施設環境の整備に取り組んでいます。

多くの施設をデザインする中で、床のデザインが、視覚障害者誘導に有効ではないかと思うようになって、この研究がスタートしています。
私の設計した「お茶の水・井上眼科クリニック」や「井上眼科病院」、「千代田区役所」、「大田区役所」では、サイン表示だけでなく、独自な床のデザインで、全ての来場者とりわけ視覚障害者も移動しやすい環境となっています。

大田区役所

現在は、単にデザインという言葉で終わらせないために、科学的な根拠に基づく実証実験を進めているところです。

このブログを通じて、視覚障害者の屋内誘導に関する様々な研究成果や実施事例等を報告しながら、誰もがすごし易い屋内環境について考えていきたいと思います。

どうぞよろしくお願い致します。


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桑波田 謙

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