視覚障害者の屋内誘導を実現します。

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  • 誘導タイル

屋内用点字ブロック開発日記

視覚障害者が屋内を自由に移動できるように、屋内用点字ブロックを開発中。高齢者や車椅子・ベビーカー利用者等にもやさしい、突起の小さなブロックです。
視覚障害者との地道な研究や成果を報告していきます。

横浜ラポールが「エスコット」を導入

点字ブロック「エスコット」の設置第2弾は、新横浜にある横浜ラポールです。

横浜ラポールは、体育館やプール、ボーリング場などのスポーツ施設と、劇場や大小様々な会議室が設置されている、障害者のためのスポーツ文化センターです。毎日たくさんの障害者が訪れます。

今回、横浜ラポールの2階、3階に、屋内用の点字ブロックを設置したいというお話から、「エスコット」が採用されました。

横浜ラポール

横浜ラポール

横浜ラポール

横浜ラポール

横浜ラポール

横浜ラポールには、毎日たくさんの車いす利用者が訪れます。「エスコット」は視覚障害者の誘導を目的とした屋内用点字ブロックですが、突起の高さがとても小さいので、車いす利用者に負担を掛けることがほとんどありません。これまでの研究から、車いすの走行時に与える振動は、JIS規格型点字ブロックの1/3と大幅に走行しやすい仕様です。ベビーカーの場合は、振動は1/9にまで軽減されます。

「エスコット」の設置後、車いす利用者にインタビューしたところ、使い勝手は全く問題ない、普段の走行と変わらないと言って頂けました。

また、ある視覚障害の利用者は、これまで館内のトイレに一人では行けなかったそうですが、「エスコット」が設置されて初めて、トイレに一人で行けたと喜ばれていたそうです。

「エスコット」は、障害の有無に関わらず、同じ場所を共有できるユニバーサルデザイン型の製品です。「エスコット」を設置することで、これまで一人では歩けなかった屋内空間が、自由に移動できる身近な空間に生まれ変わります。

 

 

 

「エスコット」を大田区役所に設置

屋内用点字ブロック「エスコット」を昨年商品化して、初めての設置事例が大田区役所です。

「エスコット」は、床に直接貼り付けるタイプの、屋内用点字ブロックです。

警告ブロックと、誘導ブロックの2種類があって、屋外の点字ブロックと同様な並べ方で、視覚障害者を誘導します。突起の高さは1.8㎜です。30㎝角のパネルで、裏に両面テープを貼って設置します。

大田区役所

大田区役所

大田区役所

大田区役所大田区役所

大田区役所

今回、大田区役所の2階に、このエスコットを設置しました。

大田区役所のこのフロアは、石貼り床になっていて、床に直接貼り付けるタイプの「エスコット」は、施工がとても用意でした。

2階のエレベーターホールから、会議室やトイレ、銀行、レストラン、行政窓口などまで、エスコットで誘導経路を作りました。

突起が小さいので、車いすやベビーカー利用者にも負担がありません。高齢者や下肢障害者など、足元が心配な方にとっても、躓きがなく安心です。

エスコットの設置後に、視覚障害者5名に対して、検証実験を行いました。

全員、全盲の方です。

エレベーターホールから会議室までを単独歩行してもらう実験を行いました。方法は、まず触地図を使って2階の状況を案内し、調査者が手引きで、エレベーターホールから会議室までを案内しました。その後、単独で同じ経路を移動してもらいました。

結果は、5名中4名が、問題なく会議室までたどり着くことができました。1名は、エスコットの経路に沿って歩くことは出来ましたが、最終目的地の会議室ではなく、手前の別の会議室に到着してしまいました。

概ね良好な結果でした。全員エスコットの経路を辿ることが出来ました。慣れれば問題なく目的地まで移動できると思います。

役所等の公共的な施設では、視覚障害者だけでなく様々な人が訪れます。屋内用点字ブロック「エスコット」は、そのような多様な人たちが同じ場所を共有できる、ユニバーサルデザインの環境を実現します。

 

 

 

東京新聞に屋内用点字ブロックのことが掲載されました

1月20日の東京新聞及び中日新聞に、屋内用点字ブロックの記事が掲載されました。

屋内用点字ブロック開発の経緯などが書かれています。

東京新聞

 

このブログには、視覚障害者の方も多くいらっしゃいますので、テキストを記載いたします。

以下、東京新聞の記事です。

天職ですか?

屋内用点字ブロック開発

インテリアデザイナー 桑波田謙さん(43)

使い手の声で試行錯誤

水玉模様の突起が付いたパネルを前に、桑波田謙さんが「屋内用点字ブロックです」と話す。すっきりとしたデザインや色合いは「視覚障害者にわかりやすいのはもちろん、インテリアデザインにも合うように考えました」と笑顔で言う。

屋外に設置する点字ブロックは、JIS規格で突起の高さなどが決められている。高齢化で屋内の設置のニーズも高まっているが、お年寄りや車いす利用者には通りにくい。桑波田さんは「一部の人たちのバリアフリーではなく、だれもが使いやすいユニバーサルデザインを」と4年前、屋内用点字ブロックの開発に乗り出した。

建物の床は道路などと比べて平らなため、JIS規格より突起が低くても認識できる。神奈川県総合リハビリテーションセンターと共同で、突起の形状を変えて視覚障害者に試してもらい、車いすの振動を計測した。下肢障害者らが歩いた様子の三次元解析なども基に、最適な突起高さや大きさ、並べ方を見つけ、2年前に商品化。東京の大田区役所にも昨年設置された。

障害者ら使い手の声を聞き、試行錯誤を重ねるのは、デザイン事務所に勤めていた六年前、東京のお茶の水・井上眼科クリニックを設計した経験が基にある。クリニックの方針で、案内表示一つ作るにも、色や形、文字の大きさを変えて様々なパターンを作り、患者百人が、見てすぐに反応できるかなどを評価。何度もデザインを練り直した仕事は、日本サインデザイン協会の賞を受賞した。

「それまでは『こうすれば使いやすいだろう』と思ってデザインしていたが、独り善がりだった」。予想が覆される面白さを知り、自分のデザインを試したいという思いがふくらんだ。その翌年に独立し、「クワハタデザインオフィス」を立ち上げた。

現在手掛けているのも、病院や公共施設でのユニバーサルデザインの設計やコンサルティングが中心だ。完成後も細かな問題が出てくれば、依頼主とともに改良を重ねる。

「デザインとは、課題解決すること」と桑波田さん。「使い手の声やデータをデザインとして昇華させるのが僕の仕事。ベストに行き着くまで、挑戦を続けたい」

インテリアデザイナー

美術や建築などの学校で学び、デザイン事務所やハウスメーカーなどに就職するのが一般的。資格は必要ないが、建築士やインテリアコーディネーターの資格を持つ人もいる。

桑波田さんは東京造形大卒。

 

 

 

白杖による誘導部案内の線状突起形状の検出に関する研究4
実験結果のまとめ

本研究は、屋内空間の誘導システムの構築を目的とし、突起高さ2mm以下の屋内用点字ブロックの線状突起形状および点状突起形状の検討を行なったものです。

研究1では、複数の線状突起形状を静止状態で検知する実験を行い、検知しやすい形状を確認しました。

研究2では、複数の線状突起形状に対して10mの歩行実験を行い、歩行時の辿りやすさを確認しました。

研究3では、検知しやすい点状突起形状に対し、複数の線状突起形状と組み合わせた際の識別し易さを確認する実験を行いました。

その結果を以下に示します。

1)静止状態での検知実験より、静止した状態の検知の確信度には突起高さと突起本数が影響している。

2)10mの歩行実験より、10m歩行の速度やエラーでは、各試料に差はないものの、歩行中の検知しやすさの評価では、突起高さに関係なく突起本数は3本、突起本数が2本、突起高さ2mmの評価が高い。

3)点状突起と線状突起の識別実験より、線状突起本数が多くなると検知率は悪くなる。

4)以上の実験結果より、線状突起形状に関しては、突起本数が多いほど、検知しやすいが、点状ブロックと組わせると突起本数が少ない方がよい。

仮に、静止状態での検知実験で確信度の閾値を4、10mの歩行実験でJISに比べて有意に評価が低くない、点状突起と線状突起の識別実験で検知率を80%以上と考えると、屋内用点字ブロックの線状突起形状および点状突起形状は、突起高さ2mm、線状突起本数2本、点状突起の直径20mmあるいは30mmの突起増設型千鳥配列となる。

本研究は、平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金奨励研究によって実施されました。

出典:白杖を用いた視覚障害者誘導用線状突起形状の検出に関する研究-

日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会梗概集,柳原 崇男,桑波田 謙,原 良昭

 

 

 

白杖による誘導部案内の線状突起形状の検出に関する研究3
点状突起と線状突起の識別実験

これまで、点状突起パターンと線状突起パターンの分りやすい形状を、それぞれ確認してきました。今後屋内誘導システムを実施するためには、点状突起と線状突起の組合せで機能する必要があります。今回は、線状ブロックと点状ブロックを組合せて、その切り替わりの分りやすさを実験により明らかにします。

 

1.試作試料

線状ブロックの試作

 ・線状突起本数:3種(1本、2本、3本)

 ・線状突起高さ:2種(1mm、2mm)

 ・線状突起幅:1種(30mm)

 ・材質:基板は塩化ビニール製タイル(25×50cm)、突起は軟質塩化ビニール

 ・試料数:計6種

 点状ブロックの試作

 ・線状突起配列:1種(突起増設型千鳥配列)

 ・突起高さ:2種(1㎜、2㎜)

 ・突起径:2種(20㎜、30㎜)

 

2.被験者

 リハビリテーション施設の入所・通所者全11名。

 

3.実験方法

 線状ブロックと点状ブロックの切り替わりの分かりやすさを検討しました。実験路は、4mの線状ブロックの直線経路に、点状ブロックを1枚挿入し、被験者には、線状ブロックを辿り歩行してもらい、点状ブロックを検知したら、静止するように指示しました。線状ブロックの試料は10mの歩行実験同様、突起本数1本、2本、3本、突起高さ1mm、2mm、の計6種、点状ブロックの試料は、点状突起形状の検出に関する研究で検討した、突起高さ1mm、2mm、直径20mm、30mm、突起増設型千鳥配列の計4種とし、組み合わせ方は、高さを統一し、各高さの線状ブロック3種(突起本数1本、2本、3本)、点状ブロック2種(直径20mm、30mm)の計6種類の組み合わせを検討しました。評価方法は、被験者が点状ブロックを検知したかどうか(静止できたかどうか)、および点状ブロックの検知後、切り替わりの分かりやすさを5件法で尋ねました。点状ブロックは、スタート地点から1.5m~3.0mの所にランダムに敷かれました。被験者が点状ブロックを検知できず、行き過ぎたとしても、エラーが発生したことについては、被験者には伝えていません。

 

実験条件:被験者はすべてアイマスクをし、こちらが指定した白杖(長さ120cm、チップタイプ)を使用し、振り方はスライドテクニックを指定しました。白杖を振ることによって発生する音(周辺床面とブロックの凹凸差による)が検知に影響する可能性があるため、ホワイトノイズを流したヘッドフォンを着用しました。

 

研究

研究

 

4.実験結果

 線状ブロックと点状ブロックの切り替わりの分かりやすさを検討するため、突起高さを統一し、各高さの線状ブロック3種、点状ブロック2種の計6種類の組み合わせについて、歩行中の検知実験を実施しました。その結果、100%検知された組み合わせは、線状突起本数が1本の場合のみで、線状突起本数が3本になると検知率は悪くなることがわかりました。突起本数2本に関しては、検知率90%以上の組み合わせもありました。

本研究は、平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金奨励研究によって実施されました。

出典:白杖を用いた視覚障害者誘導用線状突起形状の検出に関する研究-

日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会梗概集,柳原 崇男,桑波田 謙,原 良昭

 

 

 

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