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白杖による誘導部案内の線状突起形状の検出に関する研究4
実験結果のまとめ

本研究は、屋内空間の誘導システムの構築を目的とし、突起高さ2mm以下の屋内用点字ブロックの線状突起形状および点状突起形状の検討を行なったものです。

研究1では、複数の線状突起形状を静止状態で検知する実験を行い、検知しやすい形状を確認しました。

研究2では、複数の線状突起形状に対して10mの歩行実験を行い、歩行時の辿りやすさを確認しました。

研究3では、検知しやすい点状突起形状に対し、複数の線状突起形状と組み合わせた際の識別し易さを確認する実験を行いました。

その結果を以下に示します。

1)静止状態での検知実験より、静止した状態の検知の確信度には突起高さと突起本数が影響している。

2)10mの歩行実験より、10m歩行の速度やエラーでは、各試料に差はないものの、歩行中の検知しやすさの評価では、突起高さに関係なく突起本数は3本、突起本数が2本、突起高さ2mmの評価が高い。

3)点状突起と線状突起の識別実験より、線状突起本数が多くなると検知率は悪くなる。

4)以上の実験結果より、線状突起形状に関しては、突起本数が多いほど、検知しやすいが、点状ブロックと組わせると突起本数が少ない方がよい。

仮に、静止状態での検知実験で確信度の閾値を4、10mの歩行実験でJISに比べて有意に評価が低くない、点状突起と線状突起の識別実験で検知率を80%以上と考えると、屋内用点字ブロックの線状突起形状および点状突起形状は、突起高さ2mm、線状突起本数2本、点状突起の直径20mmあるいは30mmの突起増設型千鳥配列となる。

本研究は、平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金奨励研究によって実施されました。

出典:白杖を用いた視覚障害者誘導用線状突起形状の検出に関する研究-

日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会梗概集,柳原 崇男,桑波田 謙,原 良昭

 

 

 

白杖による誘導部案内の線状突起形状の検出に関する研究3
点状突起と線状突起の識別実験

これまで、点状突起パターンと線状突起パターンの分りやすい形状を、それぞれ確認してきました。今後屋内誘導システムを実施するためには、点状突起と線状突起の組合せで機能する必要があります。今回は、線状ブロックと点状ブロックを組合せて、その切り替わりの分りやすさを実験により明らかにします。

 

1.試作試料

線状ブロックの試作

 ・線状突起本数:3種(1本、2本、3本)

 ・線状突起高さ:2種(1mm、2mm)

 ・線状突起幅:1種(30mm)

 ・材質:基板は塩化ビニール製タイル(25×50cm)、突起は軟質塩化ビニール

 ・試料数:計6種

 点状ブロックの試作

 ・線状突起配列:1種(突起増設型千鳥配列)

 ・突起高さ:2種(1㎜、2㎜)

 ・突起径:2種(20㎜、30㎜)

 

2.被験者

 リハビリテーション施設の入所・通所者全11名。

 

3.実験方法

 線状ブロックと点状ブロックの切り替わりの分かりやすさを検討しました。実験路は、4mの線状ブロックの直線経路に、点状ブロックを1枚挿入し、被験者には、線状ブロックを辿り歩行してもらい、点状ブロックを検知したら、静止するように指示しました。線状ブロックの試料は10mの歩行実験同様、突起本数1本、2本、3本、突起高さ1mm、2mm、の計6種、点状ブロックの試料は、点状突起形状の検出に関する研究で検討した、突起高さ1mm、2mm、直径20mm、30mm、突起増設型千鳥配列の計4種とし、組み合わせ方は、高さを統一し、各高さの線状ブロック3種(突起本数1本、2本、3本)、点状ブロック2種(直径20mm、30mm)の計6種類の組み合わせを検討しました。評価方法は、被験者が点状ブロックを検知したかどうか(静止できたかどうか)、および点状ブロックの検知後、切り替わりの分かりやすさを5件法で尋ねました。点状ブロックは、スタート地点から1.5m~3.0mの所にランダムに敷かれました。被験者が点状ブロックを検知できず、行き過ぎたとしても、エラーが発生したことについては、被験者には伝えていません。

 

実験条件:被験者はすべてアイマスクをし、こちらが指定した白杖(長さ120cm、チップタイプ)を使用し、振り方はスライドテクニックを指定しました。白杖を振ることによって発生する音(周辺床面とブロックの凹凸差による)が検知に影響する可能性があるため、ホワイトノイズを流したヘッドフォンを着用しました。

 

研究

研究

 

4.実験結果

 線状ブロックと点状ブロックの切り替わりの分かりやすさを検討するため、突起高さを統一し、各高さの線状ブロック3種、点状ブロック2種の計6種類の組み合わせについて、歩行中の検知実験を実施しました。その結果、100%検知された組み合わせは、線状突起本数が1本の場合のみで、線状突起本数が3本になると検知率は悪くなることがわかりました。突起本数2本に関しては、検知率90%以上の組み合わせもありました。

本研究は、平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金奨励研究によって実施されました。

出典:白杖を用いた視覚障害者誘導用線状突起形状の検出に関する研究-

日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会梗概集,柳原 崇男,桑波田 謙,原 良昭

 

 

 

白杖による誘導部案内の線状突起形状の検出に関する研究2
10mの歩行実験

前回、線状突起パターンを静止状態で検知し、わかりやすい突起形状を確認しました。今回は、10mの実験空間を用意し、直進歩行の容易性を確認する実験を行いました。


1.線状ブロックの試作
 ・線状突起本数:3種(1本、2本、3本)
 ・線状突起高さ:2種(1mm、2mm)
 ・線状突起幅:1種(30mm)
 ・材質:基板は塩化ビニール製タイル(25×50cm)、突起は軟質塩化ビニール
 ・試料数:計6種

2.被験者
リハビリテーション施設の入所・通所者全11名。

3.実験方法
 直線10mの経路を作成し、歩行実験を実施しました。評価方法は、到達率(10mの歩行中、両側1m以上逸れた場合はエラーとする)、各試料の歩行時間としました。試料は検知実験①で、評価に影響のなかった突起幅を30mm(詳細は結果で後述)に統一し、突起本数1本、2本、3本、突起高さ1mm、2mm、の計6種、比較試料としてJIS規格型を加え、計7種を調査しました。JIS規格型の試行は最後とし、それ以外の6枚はランダムに提示されました。歩行後、歩行中の検知容易性について、5件法で尋ねました。歩行実験前に、被験者の普段の歩行速度を計測するため、10m歩行の歩行時間を計測しました。

また、この歩行実験では、実験中に歩行に慣れ、突起に関係なく、歩行可能になること(学習効果)が予想されるため、被験者間の学習効果の程度の差(アイマスクと指定の白杖利用のため被験者間の学習効果にばらつきが予想される)をなくすため、実験前に十分な練習を行ないました。さらに、10mとやや歩行距離が短いため、学習効果により突起がなくても歩行できる可能性があるため、突起のないフラットな状態での歩行も調査しました。


・実験条件:被験者はすべてアイマスクをし、こちらが指定した白杖(長さ120cm、チップタイプ)を使用し、振り方はスライドテクニックを指定しましたた。聴覚情報の遮蔽は行っていません。なお、普段の歩行速度の計測においては、アイマスクは着用せず、白杖も使い慣れた自分の杖を使用し、被験者が通常歩行する形態で計測を行ないました。

研究

研究

4.実験結果
 突起幅を30mmに統一し、突起高さ、突起本数を変化させ、6種の試料にJIS規格型を加え、10mの直進歩行実験を行ないました。またフラットな状態(以下フラット)での歩行を6種の試料の歩行実験の前後に2回実施しました。歩行実験の歩行順は、普段の歩行、フラット、6種の試料(ランダム提示)、フラット、JISの順です。その評価方法は、歩行時間の測定、5件法による歩行中の検知容易性を質問しました。その結果、各試料、JISおよびフラットでもエラー(両側に1m以上逸れる)は発生しませんでした。また、歩行速度も普段の歩行速度と変わりませんでした。十分な練習を行ったため、10m程度の歩行では、突起の有無に関わらず、直進歩行が可能になったと考えられます。


 5件法による歩行中の検知容易性さの評価については、JIS規格型と各試料の評価値を比べると、試料D(突起高さ1㎜、突起本数1本),E(突起高さ1㎜、突起本数2本),M(突起高さ2㎜、突起本数1本)で統計的に有意に低い評価となりました。一方試料F(突起高さ1㎜、突起本数3本),N(突起高さ2㎜、突起本数2本),O(突起高さ2㎜、突起本数3本)はJIS規格型に比べ、統計的有意差はありませんでした。評価としては、突起高さは高いほど、突起本数は多いほど評価の高い傾向にあることが分りました。

本研究は、平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金奨励研究によって実施されました。

出典:白杖を用いた視覚障害者誘導用線状突起形状の検出に関する研究-
日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会梗概集,柳原 崇男,桑波田 謙,原 良昭

 

 

 

白杖による誘導部案内の線状突起形状の検出に関する研究1
静止状態での検知実験

前回までに、白杖による分りやすい点状突起形状について実験を行いました。次に誘導部に用いる線状突起について研究を進めます。
 線状突起の研究1として、18種類の線状突起パターンを試作し、静止状態での検出を計測しました。


1.線状ブロックの試作
 ・線状突起本数:3種(1本、2本、3本)
 ・線状突起高さ:2種(1mm、2mm)
 ・線状突起幅:3種(20mm、30mm、40mm)
 ・材質:基板は塩化ビニール製タイル(25×50cm)、突起は軟質塩化ビニール
 ・試料数:計18種

2.被験者
リハビリテーション施設の入所・通所者全11名。

3.実験方法
 線状ブロック2枚を被験者から見て線状突起が縦方向(直進方向)および横方向(横断方向)に敷き、被験者はその前に立ち、杖を一振りしてもらい、突起検出の可否(検知した、検知していない)を質問しました。その後、Lichert’s scaleを用いて確信度を5件法(1.非常に分かりにくかった~5.良くわかった)で尋ねました。このLichert’s scaleに基づく確信度の分析ではそれぞれの評価値の平均値を用いました。試料は上記の18枚に突起検出の可否のダミーとして、突起のない(フラットな)塩ビタイルを6枚用意し、計24枚をランダムに提示しました。被験者には、ダミーの存在を伝え、必ずしも突起のある試料のみが提示されるわけではないことを教示しました。質問は、まず突起検出の可否を訪ね、突起を検出したと回答した場合のみ確信度を訪ねました。ダミーに対して突起を検出したと回答した場合も確信度を訪ね、誤答したことは、被験者に伝えていません。
 
実験条件:被験者はすべてアイマスクをし、こちらが指定した白杖(長さ120cm、チップタイプ)を使用し、振り方はスライドテクニックを指定しました。白杖を振ることによって発生する音(周辺床面とブロックの凹凸差による)が検知に影響する可能性があるため、ホワイトノイズを流したヘッドフォンを着用しました。

 

実験の状況です。

研究

 


実験の状況です。

研究

 

 

4.実験結果
 検知率は18枚の試料とも、直進方向100%、横方向99.4%であり,突起のない試料を検知した割合(誤答率)は直進方向0%、横方向1.7%(3/161回)でした。 
 図3は各試料の確信度(直進方向)の平均値を示したものです。その結果、突起高さ2mm、突起本数3本の試料3種類が高く、突起高さ1mm、突起本数1本で突起幅30㎜、40㎜の確信度が低いことが分かりました。
 次に、突起高さ、突起本数、突起幅を因子とした3元配置分散分析を行ったところ、突起高さの主効果(F(1、160)=15.515、P<.01)、突起本数の主効果(F(2、160)=12.258、P<.01)が認められました。一方、これらの相互作用は認められませんでした。このことよりも、突起高さと突起本数が確信度に影響していると考えられました。これにより、突起幅は確信度への影響がないため、今後の検知実験②③においては、突起幅を30mmに統一しました。

本研究は、平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金奨励研究によって実施されました。

出典:白杖を用いた視覚障害者誘導用線状突起形状の検出に関する研究-
日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会梗概集,柳原 崇男,桑波田 謙,原 良昭

 

 

 

白杖による分岐点案内等の点状突起形状の検出に関する研究2
糖尿病性網膜症の検知傾向

前回ご案内した検知実験の被験者のうち、5名が糖尿病性網膜症患者でした。そこで、検知実験において、糖尿病網膜症患者の検知率の傾向を調べました。

 

研究

 

図は検知実験の被験者を、糖尿病性網膜症患者とそれ以外に分類し、確信度の平均値を示したものです。糖尿病によって発症する合併症として、末梢神経障害があり、今回の糖尿病性網膜症の被験者も感覚麻痺の自覚症状がありました。そこで、糖尿病患者と非糖尿病患者に分類し、比較を行ったところ、相対的に糖尿病患者の確信度が低いことがわかりました。特に、突起高さ1mmと2㎜の確信度の総平均を比べると、突起高さ1mmにおいて、有意な差が得られました。ただし、突起高さ1mmにおいても、糖尿病性患者の検知率は100%でした。

現在、糖尿病性網膜症は、視覚障害の原因疾患の約2割を占め、緑内障に続く2番目に多い疾患であるため、今後、ブロックの形状を決定するためには、これらの実験結果を踏まえた検討が必要だと考えています。

出典:白杖による分岐点案内等の点状突起形状の検出に関する研究-視覚障害者のための屋内誘導システムに関する研究-

日本福祉のまちづくり学会第12回全国大会梗概集,柳原 崇男,原 良昭,桑波田 謙