視覚障害者の屋内誘導を実現します。

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白杖による誘導部案内の線状突起形状の検出に関する研究1
静止状態での検知実験

前回までに、白杖による分りやすい点状突起形状について実験を行いました。次に誘導部に用いる線状突起について研究を進めます。
 線状突起の研究1として、18種類の線状突起パターンを試作し、静止状態での検出を計測しました。


1.線状ブロックの試作
 ・線状突起本数:3種(1本、2本、3本)
 ・線状突起高さ:2種(1mm、2mm)
 ・線状突起幅:3種(20mm、30mm、40mm)
 ・材質:基板は塩化ビニール製タイル(25×50cm)、突起は軟質塩化ビニール
 ・試料数:計18種

2.被験者
リハビリテーション施設の入所・通所者全11名。

3.実験方法
 線状ブロック2枚を被験者から見て線状突起が縦方向(直進方向)および横方向(横断方向)に敷き、被験者はその前に立ち、杖を一振りしてもらい、突起検出の可否(検知した、検知していない)を質問しました。その後、Lichert’s scaleを用いて確信度を5件法(1.非常に分かりにくかった~5.良くわかった)で尋ねました。このLichert’s scaleに基づく確信度の分析ではそれぞれの評価値の平均値を用いました。試料は上記の18枚に突起検出の可否のダミーとして、突起のない(フラットな)塩ビタイルを6枚用意し、計24枚をランダムに提示しました。被験者には、ダミーの存在を伝え、必ずしも突起のある試料のみが提示されるわけではないことを教示しました。質問は、まず突起検出の可否を訪ね、突起を検出したと回答した場合のみ確信度を訪ねました。ダミーに対して突起を検出したと回答した場合も確信度を訪ね、誤答したことは、被験者に伝えていません。
 
実験条件:被験者はすべてアイマスクをし、こちらが指定した白杖(長さ120cm、チップタイプ)を使用し、振り方はスライドテクニックを指定しました。白杖を振ることによって発生する音(周辺床面とブロックの凹凸差による)が検知に影響する可能性があるため、ホワイトノイズを流したヘッドフォンを着用しました。

 

実験の状況です。

研究

 


実験の状況です。

研究

 

 

4.実験結果
 検知率は18枚の試料とも、直進方向100%、横方向99.4%であり,突起のない試料を検知した割合(誤答率)は直進方向0%、横方向1.7%(3/161回)でした。 
 図3は各試料の確信度(直進方向)の平均値を示したものです。その結果、突起高さ2mm、突起本数3本の試料3種類が高く、突起高さ1mm、突起本数1本で突起幅30㎜、40㎜の確信度が低いことが分かりました。
 次に、突起高さ、突起本数、突起幅を因子とした3元配置分散分析を行ったところ、突起高さの主効果(F(1、160)=15.515、P<.01)、突起本数の主効果(F(2、160)=12.258、P<.01)が認められました。一方、これらの相互作用は認められませんでした。このことよりも、突起高さと突起本数が確信度に影響していると考えられました。これにより、突起幅は確信度への影響がないため、今後の検知実験②③においては、突起幅を30mmに統一しました。

本研究は、平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金奨励研究によって実施されました。

出典:白杖を用いた視覚障害者誘導用線状突起形状の検出に関する研究-
日本福祉のまちづくり学会第13回全国大会梗概集,柳原 崇男,桑波田 謙,原 良昭