視覚障害者の屋内誘導を実現します。

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神奈川県ライトセンターでの調査

2年ほど前に、神奈川県ライトセンターで視覚障害の職員の方3名に、屋内用点字ブロックの調査を行いました。

調査の目的は、視覚障害者にとって、屋内用点字ブロックは有効かどうかを確認することです。

被験者の方は、3名とも白杖のエキスパートでした。2名は全盲で、1名は障害1級ですが光覚がありました。
光覚のある方には、遮光マスクをつけていただいて調査に入ってもらいました。
3名とも、屋内用点字ブロックを体験するのは初めてです。

調査会場は、2つの経路を作成しました。
1つ目は、「床の素材差による誘導の有効性に関する調査」と同様にシンプルなL字型経路で、直進、左折、直進と辿ります。

神奈川県ライトセンター

写真はL字型経路

2つ目は、「ヨッテク」と同様に、経路の途中に2つの分岐点がある複雑な経路で、直進、2つ目の分岐点を左折、直進と辿ります。
それぞれ、カーペットの空間に塩ビ製タイルを埋め込んで経路とし、分岐点には突起の小さな警告ブロックを設置しました。
警告ブロックは、突起の高さ0.5MM、円形で千鳥格子配列としました。

神奈川県ライトセンター

写真は、2つの分岐点がある複雑な経路

調査の方法は、事前に触知図で経路をイメージしてもらい、スタートの合図でゴールを目指してもらいました。

神奈川県ライトセンター

写真は、経路を辿るの様子

結果は、1つ目のL字型経路は、全員問題なく目的地に到達しました。
スタートの合図で、瞬時にスライドテクニックを用いて、経路を逸れることなく辿ることができました。
2つ目の複雑な経路では、2名は問題なくゴールにたどり着けましたが、1名はゴールにたどり着けたものの、2つ目の分岐点を検知できずに行き過ぎてしまいました。
この方は、大柄で歩幅も大きく、杖も大きく振るために、警告ブロックに杖が当たらず、検知できなかったのが理由です。

調査から分ったことは、
・カーペットにタイルを埋め込んだ経路は、白杖で検知可能である。
・白杖を使い慣れている視覚障害者の歩行速度は、使い慣れていない人よりも速い。
・スライドテクニックなら、突起高さ0.5MMというわずかな突起でも検知可能である。
・警告ブロックの配置方法は、白杖の軌跡を考慮しなければならない。
・事前に経路情報を伝えることで、経路検知が容易になる。

一方で、調査を通じて考えさせられることもありました。
・警告ブロックのベストな突起形状はどのようなものか。
・突起形状や突起高さ、突起の配列方法などと、検知しやすさの間には、相関関係があるのではないか。
・誘導部は突起があればより分りやすいのではないか。
・受障暦が浅く、歩行訓練したての方が、利用できるのか。

これらの疑問を解決するには、イベント的な調査だけでなく、科学的な検証が求められるでしょう。
次回以降は、科学的な根拠を導き出す取り組みについて話していきたいと思います。


株式会社クワハタデザインオフィス
桑波田謙
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屋内用点字ブロックの体験イベント

ちょうど2年前の2009年7月に、パシフィコ横浜で「ヨコハマ・ヒューマン&テクノランド(通称ヨッテク) 福祉を支える人とテクノロジー」という福祉イベントがありました。弊社も協賛させていただき、会場内に屋内用点字ブロックの体験コーナーを設置して、多くの来場者に体験していただくことが出来ました。
6.5メートル×4.5メートルの体験コーナーにカーペットを敷き詰め、そこに屋内用点字ブロックの誘導経路を設置しました。経路は、縦に一直線とそれを交差する2本の横直線で、分岐点、スタート地点、ゴール地点には警告パターンが配置されています。
体験者には、ゴーグルで視覚を遮蔽して、白杖を使って経路を辿っていただきました。

体験者は合計66名、平均年齢28歳、健常者が中心でしたが視覚障害者も3名、下肢障害で杖や車椅子利用者も体験されました。小学校低学年のお子さんや、高校生も多くて、とてもにぎやかな体験コーナーとなりました。
多くの体験者が、白杖を触れるのも初めてで、ゴーグルをつけて白杖で歩くことに不安を感じながら、とても興味をもって楽しんで体験してくれたのが印象的でした。

体験者には、「スタート地点から2つ目の交差点を右折してゴール地点で止まる」ことをお願いして、行動分析を行いました。

屋内用点字ブロックの体験イベント

介護を勉強する学生さんが多く来場していました。

 

屋内用点字ブロックの体験イベント

高校生も楽しんで体験していました。

屋内用点字ブロックの体験イベント

小学生は俄然やる気満々で、何回も行ったり来たりしていました。

屋内用点字ブロックの体験イベント

小学校低学年のお子さんには白杖が長すぎましたが、それでも上手く使っていました。

屋内用点字ブロックの体験イベント

盲導犬の体験者もいらっしゃいました。とても楽しんでいらっしゃいました。

屋内用点字ブロックの体験イベント

車椅子の方も体験されました。とても使いやすいと評価していただけました。

結果は、ゴールにたどり着けた人59名、たどり着けなかった人9名。たどり着けなかった人は、交差点をうまく検知できずに右折できずそのまま直進してしまうケースと、真っ直ぐ歩行できずに経路を外れてしまうケースがありました。
視覚障害者の2名は、問題なくクリアできました。


体験者にはいくつかのアンケートをお願いしました。
経路は分かりましたか?との質問に、58名が「はい」、5名が「いいえ」、3名が「どちらでもない」と答えました。
分岐点は分りましたか?との質問に、53名が「はい」、6名が「いいえ」、7名が「どちらでもない」と答えました。
屋内用点字ブロックを歩いた感想は、47名が「歩きやすかった」、10名が「歩きづらかった」、8名が「どちらでもない」と答えました。
仮に屋内にこのブロックが敷かれていたらどう思いますか?との質問に、46名が「気にならない」、19名が「気になる」と回答しました。
みなさん初めての体験でしたが、とても上手に経路を検知しながら歩くことが出来たと思いました。
7メートル程度の移動距離ですが、屋内誘導の可能性を改めて感じることが出来ました。
下肢障害で杖を使われている方に、歩きやすいととても好評でした。
車椅子利用の方も体験されました。全く段差や振動は感じないとのこと、とても使いやすいと評価していただけました。

最後に、いわゆるJIS規格型点字ブロックについて、「屋外や屋内で点字ブロックが敷かれていたら、あなたはどうしていますか?」と質問したところ、「特に気にしない」が13名、「気にしながら歩く」が27名、「なるべく避けて歩く」が25名という結果でした。
やはり多くの人は、いわゆる点字ブロックを気にしながら歩いているようです。

このヨッテクというイベントは、とてもフレンドリーで楽しいイベントです。今年で9回目を迎えましたが、是非今後も継続してほしいと思っています。
ヨッテクのホームページです。


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